台頭する医療分野
核医学画像診断法
長い道のり
臨床試験
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      原子力技術と医療の融合

      Advanced Accelerator Applications社は疾患の認知と治療を可能にする医薬品開発に向け、核医学技術と標的薬設計を融合させる取り組みを進めています。

      Goran Mijuk

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      Maurizio Marianiは2008年にAAAに入社し、がんの治療と画像診断に使用できる核医学治療を開発

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      Maurizio Franco Marianiが惹かれるものは「挑戦」、苦手なのは「ルーティン」です。ですから、10年以上前にイタリア北部にある会社Advanced Accelerator Applications(AAA)からあるポジションのオファーを受けたときは、すぐにこれに応じました。AAAでやるべき仕事は、放射性粒子を用いた新しい治療法へのアプローチの開発でした。

      薬理学や医薬品開発に専念する前に医師として経験を積んできたMarianiは、「これまで働いてきた中で、安易な解決策を選んだことはありません」と語ります。「AAAの創立者で当時CEOだったStefano Buonoが2008年に核医学の治療法を開発しないかと持ちかけてきたとき、極めて斬新な分野だったので、即この機会をつかみ取りました」

      大手製薬会社を離れてAAAへ移るのは、これまでのキャリアの中でもかなり大胆な転職でした。2002年に創立され、現在ではノバルティスの傘下にあるAAAには当時、わずか数十人の社員しかいなかったのです。しかし、そこには放射性核種と呼ばれる高エネルギー放射性粒子を用いた革新的ながん治療を開発するという明白なビジョンがありました。

      その頃は、少量の放射性粒子を用いてがんの治療法を開発している専門クリニックが欧州や米国にわずかにあるのみでした。しかも、高エネルギー放射性粒子を放出して腫瘍細胞のDNAに損傷を与える放射性薬剤とがん細胞に結合する化合物の組み合わせは手作業で行われていたのです。

      このように、世界中の患者に適用できる標準化した核医学の開発は複雑で、克服不可能なことのように思われていました。しかし、Marianiが率いるチームはこの難題に立ち向かっていきます。

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          Francesco Cipollaのある1日
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          台頭する医療分野

          核医学という医療分野は、AAAが設立された2002年当時にはすでに定着していました。しかし、治療法でも診断法でも、そこに潜む可能性が完全に認識されていたわけではありませんでした。

          この分野の起源は20世紀への変わり目までさかのぼります。当時、アンリ・ベクレルとマリー・キュリーが放射性粒子を発見し、その後1930年代に、カリフォルニア大学バークレー校に勤務していた米物理学者アーネスト・ローレンスとその弟で医師のジョン・ローレンスの取り組みにより、早くも盛り上がりを見せます。

          アーネスト・ローレンスは、放射性同位体とも呼ばれる放射性核種を人工的に生成する粒子加速器を発明した人です。そして、弟ジョンはこのような分子をいち早く医療に応用します。サイクロトロンと呼ばれる装置を使ってさまざまな放射性粒子を生成し、それを白血病やその他のがんの治療に用いたのです。

          ジョン・ローレンスは核医学の父と呼ばれ、その業績は研究の嵐を引き起こします。物理の世界ではサイクロトロンを使って新しい放射性粒子が次々と発見され、医学の世界ではこれらの放射性核種がさまざまな疾患領域で応用されていきました。

          特に急速な発展を見せたのが診断学の分野でした。高エネルギー粒子によって体内にあるがんの位置を非侵襲的な方法で容易に特定できるようになったためです。

          この画像診断検査では、体内に痕跡を残す、ごく少量の放射性物質が患者に投与されます。この物質の測定には、2000年前後に広く普及した陽電子放出断層撮影(PET)や単一光子放射断層撮影(SPECT)などのイメージングツールが使われます。

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          使い捨てのガウンや防護具は特別容器に処分

          核医学画像診断法

          このような背景から、AAAは病院や医療センター向けに、PETやSPECTといった画像診断法に必要な放射性薬剤の生産を始めました。当時、そのような薬剤を独力で作れる医療機関はほとんどなかったのです。

          欧州原子核研究機構(CERN)で働いた経験を持つAAA創設者のBuonoは、基礎となる物理的プロセスを熟知しており、これらの製品を期日通りに納めることがいかに困難であるかをよく認識していました。

           放射性画像診断用医薬品の生産そのものも一つのチャレンジでしたが、それだけではなかったのです。薬剤に含まれる放射性分子の半減期は数時間から数日で、このような分子を含む製品はその活性を維持するために迅速に納品されなければならず、これもまた販売面にかかる圧力となりました。

           それでもAAAはすべてを克服し、このような放射性核種を含んだ画像診断用の製品を製造して、欧州の広域をカバーする病院流通網を構築しました。

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          AAAの研究開発チーム(左から)Donato Barbato、Daniela Chicco、Clementina Brambati、Lorenza Fugazza、Valeria Muzio、Elena Bisone

          長い道のり

          この成功に勇気づけられたAAAはさらに上を目指し、同じように世界各国の病院で使ってもらえる放射性核種をベースとした標的治療の開発の可能性を探り出そうとしました。しかし、その難度は実に甚だしいものでした。

          Marianiは次のように語ります。「AAAは限られた資金しかない小企業でした。標準化された核医学治療の開発・生産という目標を達成するには、可能な限り効果的かつ迅速な方法を見つけ出し、困難な課題をいくつもクリアしなければなりませんでした」

          最初に越えるべきハードルは、治療に使え、患者の元に届けられるほど半減期が長い、適した分子を見つけることでした。このような分子を探し出すために数年を要しましたが、Marianiのチームはついに、治療中の腫瘍に対して有効性を示した放射性核種と結合し、半減期が数日ある低分子ペプチドの発見に至ります。

          しかし、臨床試験を始める前に、病院に送った後、最も速い方法で患者の手に届けられ、かつすぐに使える業務用製品を開発しなくてはなりません。

          そこで、核化学者の小さなチームががんと結合する分子と放射性核種を組み合わせるシームレスな製造プロセスを作り、もう1つのグループが治癒薬を製造後2~3日以内に病院へ配送するグローバルな流通網の確立に取り組むことになりました。

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          Francesco Cipollaが防護用の衣服を何枚も身につけてから……

          臨床試験

          これは困難な長い道のりの一部に過ぎません。Marianiは次のように話します。「チームにとってもう1つの重要なステップは、過去の使用に基づいて、漏れのない前臨床試験パッケージの構築と利用可能なすべての臨床データの収集を行い、ヒト被験者による正式の無作為化第III相試験の実施に向けて準備することでした。これに関連する情報やデータの量は膨大で、かなりの時間を要しました」

          Daniela Chicco、Jack Erion、Paola Santoroの面々を含むMarianiのチームは規制当局を納得させようと、既存の患者データをふるいにかけながら、臨床試験の実施計画書を作成したり揺るぎない規制戦略を確立するために数カ月を費やします。手作業で行っていた頃の治療法に携わった他の腫瘍専門医や核医学専門医も、この膨大な量を見て応援に駆けつけました。

          2年間の激務の後、AAAが2012年夏に欧州初の被験者を登録すると、その後すぐに米国でも試験が開始されます。

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          特別な鉛製ケースに入れられて発送を待つ核医学治療薬

          アクセスの向上

          臨床試験を開始できるようになるまで、またこれまでこのような治療を受けるために長距離を移動しなければならなかった患者に届けられるようになるまでに、多くの壁を乗り越えなければならなかったAAAは、心身ともに疲れ果てます。しかし、Marianiをはじめとする科学者たちはこの核医学の標的療法には大きな可能性が潜んでいると確信していたため、その後も頑張り抜きました。

          核医学の大きな利点の1つは疾患の治療と画像診断を密接に結びつけられることだ、とMarianiは言います。「私たちにとって核医学の素晴らしさと強みとは、画像診断と治療の両方を組み合わせた、真に精密なアプローチを開発できることです」

          がん細胞を結合する同一または類似の分子は、患者の治療にも疾患の評価にも利用できます。ただ核粒子を取り変えればよいのです。「この戦略なら、放射性薬剤を変えながら同一または類似の標的分子を使って、がんの位置を特定することもがんの治療に当たることもできるのです」

          「私たちにとって核医学の素晴らしさと強みとは、画像診断と治療の両方を組み合わせた、真に精密なアプローチを開発できることです」

          Maurizio Mariani

          このようなアプローチには数々の利点があることから、核医学にはさらなる発展が期待されています。「核医学の素晴らしい可能性を今後も活かし続け、このアプローチで医療の現場を変えていくことができれば幸いです」 とMarianiは抱負を語ります。

          2018年にノバルティスが買収したAAAは現在、多発性固形がんなど、他の腫瘍性疾患の治療を見据えた新しい標的療法の研究を行っています。

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